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インシデント管理ツールの導入を考えたとき「導入までにどのような準備が必要なのか知りたい」という人も多いのではないでしょうか。「導入まで何をすればいいのか」「予算取りをしたい」と考えるものの、具体的にどのような流れで何をすれば良いのか分からず、進めづらいと思っている方も少なくないでしょう。ツールを導入するにあたって、どの様な工程があり、それぞれの工程にかかる時間等は、ツール導入を専門としている人でなければ、知る機会も限られてくるものと思われます。
ここでは、パッケージソフトウェアやSaaSを導入する際に必要になる代表的な工程を紹介して、それぞれの工程のポイントと想定される工数の例をご案内いたします。
ツール導入に必要な工程
ツールを導入するためには様々な工程を踏む必要があります。導入支援に関わってくる、ソフトウェアベンダーや、導入を支援してくれるSIerによってその工程は異なります。今回は代表的な例として、以下のような工程を想定します。
- 製品選定
- 要件定義
- Fit & Gap
- 導入テスト
- 稼働準備
- 教育
- 稼働判定
今回は、ツールを初めて導入するケースを想定して検討すべき基本的な工程を挙げ、この流れで導入を進めるものとして、工程ごとに目安になる工数を解説していきます。
検討から導入までの工程毎の概要と想定工数
それぞれの工程でどのような作業があるのかイメージしやすいように、皆さんがやるべき作業内容についてもご説明していきます。なお、今回は1人月を20日を目安に考えていきます。
製品選定
製品選定では、まず以下の2つのポイントに注目をして検討を進めます。
- ソフトウェアに求めることの洗い出し
- 既存業務の問題点洗い出し
これらの洗い出しが完了すれば、要望に沿ったインシデント管理ツールが存在するかを調査します。有名なものが存在しますので、それらの公式サイトから機能などの情報を収集すると良いでしょう。各社主な機能は公式サイトで解説していますので、十分な情報を得られると思います。
情報が得られた後は、ソフトウェアベンダーやSIerへ問い合わせをして製品デモを受けます。デモの内容を確認し実際に運用に耐えうると判断できるようであれば、具体的に導入の検討を進めます。
製品の選定から実際の導入検討までの工数例をあげると以下のとおりです。
- インシデント管理ツールの調査:0.1人月
- 問い合わせする製品の選定:0.1人月
- 営業などによるデモ実施:0.05人月
- 導入検討・稟議:0.1人月
インシデント管理ツールの最初の選定作業なので、作業自体にはそれほど多くの工数はかからないでしょう。ただし、問い合わせをしてから営業の対応を待つなど、別途待機期間が発生します。
また、稟議を通さなければならない場合、それに伴う待機期間が生まれる場合があります。それらを踏まえると、工数は少ないものの、選定の期間以外の待機時間が発生する工程になります。 選定を完了させる目標の期日を設定したうえで、無理なスケジュールになっていないか、待機時間は考慮されているか、事前に確認できるとよいでしょう。
要件定義
要件定義とは、システムにどのような機能が要るのか洗い出す作業です。要件定義はSIer主体で進めてもらうことになります。ここで要件の洗い出しが適切にできていなければ、運用を開始してからトラブルに発展する可能性が高くなります。
また、ソフトウェアに対してあれもこれもと欲張りすぎても、全ての機能が満たされたツールが必ず手に入るわけではありません。業務に必要不可欠な機能や、ソフトウェアへの要求・要件に優先順位を付けることが必要になります。 また、選定対象にあがったソフトウェアの設定やカスタマイズ機能を利用して、どのような環境に仕上げるのかは、SIerとヒアリングしながら進めていきます。
要件定義の工数例をあげると以下のとおりです。
- SIerとの打ち合わせ(数回):0.1人月
- ヒアリングシートへの回答(1回目):0.3人月
- ヒアリングシートへの回答(2回目):0.2人月
最初にSIerと打ち合わせをする際に、ヒアリングシートが提供されることがあります。回答方法を確認しながら、実際にヒアリングシートへの回答を進めます。
ヒアリングシートに回答した後は、それを元にベンダーが内容を確認します。その後再度ベンダーとの打ち合わせを持ち、ヒアリングシートの調整を行い、要件を詰めていきます。 要件定義の工数に影響をあたえる要素は、ヒアリングシートの項目数と意思決定者の判断力です。ヒアリングシートの項目数に比例して工数がかかりますし、意思決定者が誰なのか曖昧だったり、複数存在して合議が必要だったりすると、決断までに時間を要してしまいます。できれば、検討段階から意思決定権者の参加や、社内の経過状況を共有するなど、スムーズな運営ができるようにするとよいでしょう。
導入テスト
導入テストは、実際にインシデント管理ツールが業務で利用できるかどうかを判断する工程です。ソフトウェアは機能をコンフィグなどで制御できるようになっていますので、「基本的なコンフィグ設定で利用できるかどうか」「どのコンフィグ設定を変更する必要があるかどうか」を検討します。 どの程度の導入テストが必要になるかはインシデント管理ツールを提供する規模により大きく変わるはずです。今回はおおよその目安として、大規模・中規模・小規模に分類して記載してみると以下のとおりです。
- 大規模:0.5人月~1.0人月
- 中規模:0.3人月~0.8人月
- 小規模:~0.5人月
導入テストはインシデント管理ツールの導入において非常に重要な工程です。実際にシステムが想定通り動くか確認する作業であり、業務フローに沿って検証する必要があります。そのためどうしても工数は大きくなる傾向にあります。
予算の関係でテスト工数の削減を考えられるケースも目にしますが、ここを削減するのはおすすめできません。想定外の動きなどの検出もままならなくなり、運用開始後のトラブルの原因となります。
稼働準備・教育
インシデント管理ツールの導入は「システムの導入=完了」ではありません。システムの稼働準備や、利用者への教育も大切な工程の一つです。ツール導入の工程は運用が開始される直前の準備も含まれるので、もうひと踏ん張り必要です。
具体的に必要な工程は導入する規模によって異なりますが、稼働準備の工数例をあげると以下のとおりです。
- 教育用資料の作成:0.4人月
- 利用者向け教育:0.05人月
- 利用者一覧の作成:0.2人月
- ベンダーへのユーザー登録依頼:0.05人月
- 利用者へのID/PW展開:0.05人月
このように利用者に教育するための準備に時間がかかります。特に資料を社内で用意する場合は、教育資料の作成に比較的多くの時間を要してしまいます。SIerやベンダー側で提供してもらえることができれば、この工数は削減することも可能です。
また、教育以外の準備として、利用者マスタとして、インシデント管理ツールを利用する際に必要になる、ユーザーIDとパスワードを発行する必要があります。一例として、メールアドレスをIDとして利用できるようにする等、場合によっては従業員マスタ情報などと連携するために、他システムの担当者とコミュニケーションをとりながら進めなければなりません。
稼働判定
一連の準備が完了すれば、意思決定者による稼働判断に移ります。ここで問題なく承認が下りれば、インシデント管理ツールを本格的に利用できるようになります。
判定は会議形式で行われることが多く、この会議のための準備工数が必要になります。どのような書類が必要とされるのかは、これまでの工程で作成されてきた要件定義書、外部・内部設計書、稼働反転リスト等、企業によって異なります。
まとめ
今回はインシデント管理ツールを導入するためにやるべきことと、発生する工程の例をご紹介しました。皆さんがイメージしていたよりも多くの工程があり、また多くの工数がかかっていたのではないでしょうか。
インシデント管理ツールを導入するためには最低2-3人月は必要となります。そのため、気軽に導入できるわけではありません。ただ、スクラッチソフトウェアを開発するよりは遥かに短い時間に抑えることができます。工数を少なく抑えるとの観点では、やはりインシデント管理ツールとして販売されている製品の導入が適しているのです。
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